2008年5月30日金曜日

大つぶ貝と馬肉のタタキ



今日の「美加佐」の大きいののもうひとつはツブ貝。
握りこぶしぐらいある。
北海道産。
大大将、これも豪快に粗切り刺身に。
乱暴なわりには、アサツキや野菜の千切りがあしらってある。
酔っぱらっても繊細なんだ。

仕上げ直前に馬刺のタタキ。
馬肉は表面炙ったタタキにすると、甘みが出ておいしくなる。
炊き込みご飯で仕上げ。

法善寺横町の提灯を後ろに「また来ます」

2008年5月29日木曜日

黄アラ




「九州のアラよりも、こっちのアラのが上!」と出て来たのは「黄アラ」
九州のアラというのは巨大な魚で、大きいのは1メートルぐらいある。
これは刺身でも食べるが、博多の皆さんは冬場に鍋で食べる。
冬の大相撲九州場所では、力士の皆さんにみんな行ってしまうので、博多の町には出回らないとも聞いている。
ところが「美加佐」の大大将が出してくれたこの「黄アラ」は、それとは全く違うものだそうで、形は小さい、とは言っても太った鯛ぐらいある、黄色いどっしりした魚だ。熊野灘で揚がったもの。

頭を出してくれた。
厚い唇がぷっくりと付いている。
「唇うまそ〜〜〜♩♩♩」

身の刺身が出て来た。ずいぶん乱暴な厚切りだ。
小大将「今日は女将が用事で居ないので、3時頃からあそこのお客さんと飲み始めちゃったんです。酔っぱらうとだんだん切り身が大きくなるんです」と、困った顔。
大大将の歳を心配しているのだろう。

黄アラの潮汁が出て来た。
真っ先にゼラチンぷりぷりの唇を食べ、ほっぺたの肉をぷるぷるの皮と一緒にかじってから気が付いて撮影。

2008年5月28日水曜日

琵琶湖の大うなぎ、頭と肝の取り合い



大阪で行く店のひとつは法善寺横丁の「美加佐」06-6211-6665
ここは、巨大ウナギだのクジラだの珍しい魚介類、特に大きなのをその都度仕入れ、刺身やただ焼くだけで出してくれる。素材をいじらないで直にその味を楽しませてくれる店。

年に一度程度しか行かないのに、予約したら覚えてくれていて、カウンターに座ったら大大将が「これ、用意しておきました」と出て来たのは以前にも感動した琵琶湖の大ウナギ。
そのまま白焼きがいいと大大将の推薦で「お願い」と言った所で「ちょっと待って」とデジカメを慌てて取り出す。
小大将(息子さん)が、頭から半分取っておいてくれたすごいウナギをそのまま皿に乗せてくれて、撮影。
頭の後ろが半分カットされていて、うまく活き締めにしてあるのがわかる。
獰猛な体なのに、目はくりっと優しい。
これには肝が付いていて、頭を取るか肝を取るか問題になり、私が頭、同行者は肝になった。
小大将がていねいにやってくれた白焼きは、中じゅくじゅくのジュースたっぷり、表面薄くパリっ。でかい頭が横に転がっていた。

2008年5月27日火曜日

大かまど飯「寅福」





名古屋駅前のいつも行っていた中華レストランは、宮廷料理系なのに日本の食材と顧客の好みを研究し、素晴らしいメニューを造ってくれた北京のシェフと、手頃な価格のいいワインを提案してくれたソムリエが、そろってどこかに引き抜かれ、そのあとは全く変わってしまった、という情報を得ていたので、どこか無いかと探していた。

ツインタワーのシャトルエレベーターで一気に12階に行き、ぶらぶら時計回りに回り出したら、角に4つの大きなかまどを置いた、オープンキッチンの居酒屋風がある。
ここは、大かまど飯「寅福
東京表参道が本店のチェーン店だ。

入り口のメニューに「ゆでたて空豆」「イワシの丸干し3本」その他魅力的なのが書いてある。
これは良さそうだ、早速突入。
かなり広い店内で、禁煙席もちゃんとある。
オープンキッチン前のゆったりしたカウンターの落ち着く一番隅に陣取って、調理風景を見ながらゆっくりやってみるか。

ゆでたて空豆は、先端部分をていねいにカットしてから固めにゆでてある。
イワシの丸干しは、軽く干しただけなので、軟らかくジューシー。
こういうの、昭和育ちの腹にはジーンと来る。
「ポテトサラダにかりかりベーコン乗せ」なんて言う洋風も頼んだら、ポテトは荒々しく固め茹で、新鮮オニオンスライスが混ぜ込んまずにはらりとポテトの上にかぶせ、その上にかりっと焼いたベーコンがかけられている。
混ぜ込んで出来ているポテトサラダをどかっと器に入れたのではない、盛りつけたこのポテトサラダは、素朴なおいしさ。

仕上げはこの店名物ご飯を、崩れる直前にふうわりと握り、たらこを乗せ、ぱりぱり海苔で半分包んだおにぎり。
それに、出汁がきいている春アサリの味噌汁。

テキパキ仕事をしている厨房内を眺めながら、続々混んで来た後ろの店内を振り返って見たら、若い客がかなり多い。
昭和を意識したのではないだろうが、この団塊世代の心にしみいる料理に、若い人たくさんはうれしいね。

2008年5月26日月曜日

琵琶湖のモロコ



「琵琶湖のモロコです」
モロコは捕れなくなってきたそうだ。
小さいが、まるまると太ったモロコが出て来た。
腹の辺りまで口に入れて歯でかしげたら、ほろりときれいに二つに割れ、頭の方が舌の上に転がり落ちた。
小さな魚体なのに、味には凝縮された自然の存在感がしっかりある。
口直しには生姜をパキッとかじる。
もう半分のモロコを食べたあとは、酢漬けの蓮をぱりん。
頭の皮を剥がしてさっとゆでた空豆は、固めでポクッ。
このあと、イワシを山椒の実で煮たのが出て来た。
山椒のいい香りが舌を刺激する。
そこで大きな氷の上に注いでしっかり冷えた芋焼酎をぐびり。

2008年5月23日金曜日

にゅうめん合戦



仕上げににゅうめん。
にゅうめん、煮麺、煮湯麺、いろいろ。
福山の「八寸」と、京都の「河繁三条店」のにゅうめんは、両方の街を代表しているようだ。
福山のにゅうめんは、具がいろいろたっぷりで楽しい、ボリューム満点。
エビ、たこ、ハモ、茸、三つ葉。
京都のにゅうめんは、上品、シンプル、雅。
鯛の骨を焼いた出汁で、ネギだけが乗り、一味唐辛子が品良くふられているだけ。
エネルギッシュ向けの福山と、公家向きの京都。

2008年5月22日木曜日

たっぷり腹に瀬戸内海




ハモの肝だの鯛の白子だののあとも、まだまだ瀬戸内海の魚が続々と。

メバルは元気で丈夫な身の締まりが魅力だが、これが塩焼き。
頭、背びれ腹びれの端っこの、骨とわずかに付いた身がぱりぱりと軽快な音を立てて我が歯で砕かれる。怪我をしないように慎重に。

次は鯛の兜煮。
まずは目玉と一緒に周りのぬるぬるをまとめて口の中に放り込み、ちゅっと吸うと、とろとろのゼラチンがまとめて舌に絡まり込んだ。
目玉と周りの骨をぺっと吹き出し、次はほっぺたをほじくり出す。
ぽろりと指の先ほどの百合の根みたいな肉片が転がり出て来た。
エラの下から、鯛の鯛がほじくり出され、ぺろっと肉を舐め取った。

そしてサワラのたたき。
身の表面を強火でばりっと炙って、表面の甘みを出してから、切り身にして、ポン酢でサラダ仕立て。
身は濃厚、味はヘルシーさっぱり。

瀬戸内海がたっぷり腹にしみ込んだ。

2008年5月21日水曜日

瀬戸内海、魅力的な腹の中




春というか初夏というか、この時期瀬戸内海では元気に魚がいろいろ揚がってくる。
活きのいい魚をいつも出してくれる福山の「八寸」
広島県福山市南町3-11 084-921-1781

カワハギの肝は醤油にあえて、薄切りにした身のスライスを付けて食べるが、最高鮮度の肝はそのまま食べると、ぷりぷりと、おいしさの塊。
そのカワハギの肝が、さっと湯通しした程度で、ころりとした形そのままで出て来た。
脂が表面ににじみ出ている。
ひとつをつまんで口に入れたら歯の間を滑ってつるりと入って来た。

次に出て来たのは光沢のいい親指大の塊と、その横にヒダヒダに、珊瑚のような形か、花が咲いたようなのがある。
これは、鯛の白子と小。
ごく薄い醤油味でさっと煮てある。
ホクホクという食感。
魚の腹の中、魅力的妖味がみっしり詰まっている。

そして今年初めて食べるハモ。
表面パリッと焦がしてあり、つや消しの白。
初ハモだ。

2008年5月20日火曜日

見つけた京都の小料理屋




いつも行っていた先斗町の店が無くなってしまい、小さな、隠れるようにちょっと行ける、小料理がおいしい京都の店を探していたのだが、ひとつ見つけた。
高瀬川沿いにあるこの店は、とある人の紹介で「一見様お断り」

一見様お断り、というのは、トンチンカンな客が入り込むと常連客が迷惑するので、それを防止する手段。別に威張っているわけではない。

夕方早めに入ったら客は未だ居ず、温厚な大将はおばんざい(京都の総菜)造りに忙しい。
どう注文したら良いかわからないので、ビールを飲みながら忙しく立ち働く大将と京大生のアルバイトを見ていたら、ちっちゃな器に山菜いろいろ使ったおばんざい4種が「取り合えず」と出て来た。
すこしずついろいろは、うれしい。
「外はさわやかだから」と、カウンター前の窓を開け放してくれたら、高瀬川のせせらぎと一緒に、初夏の風がふわり。

優しい目をした、私より少し歳下らしき紳士が一人入って来た。
「先生、いらっしゃい」
何の先生かな?
一昨日、出張先の東京で地震にあったと言うこの先生と話が合い、京都に住む建築家だと分かった。

次に入って来たのは、50歳ぐらいに見えるご婦人が一人。
私と建築家の間に座った。
コップに赤ワインを一杯、それにシャンパングラスとペリエを大将が出した。いつもの飲み物なのだろう。
どうやって飲むのかと思ったら、ワインをちょっとシャンパングラスに入れ、それをペリエで割った。
赤ワインのペリエ割り。
なるほど、これはおしゃれ。
自然に3人で話し出し、このご婦人は、東京の白金と京都の両方に住んでいるとわかった。

そこに今度は二十歳代のまじめそうなな若い男が入って来て、建築家の隣に。
一人で来た、初めて出会う4人の客が並んで座ったわけだ。
3人、ワアワアやっている所にこの若い男が引きずられ、話に入って来た。
この人は、世界中、特殊な国を放浪したあげく、奈良の神社の神主になった。

話は芸術になり、ヨーロッパになり、コンサートホールの音響効果になり、地震の話から耐震建築技術になり、五重塔(真ん中の柱が吊られた構造で耐震)になり、鐘つき堂(鐘を吊るすことで耐震、鐘が無いと倒れる)になり、神社仏閣になり、神主とは何だになり、江戸っ子とは何だ京都っ子とは何だになり、酔いの中で飛び回り、焼酎がどんどんお代わりされているところに、ご主人がおばんざい一切れずつを皿に乗せて出してくれた。

一見さんお断り、いいねえ。

2008年5月18日日曜日

今年の生ハム



くにひろさんのところから、今年の生ハムが届いた。
昨年は富士山の麓だったが、今年は日光の大谷石洞窟で熟成させたもの。
この洞窟は、温度と湿度が一定で、滝沢ハムも昔からこれで生ハムを造っている。
昨年のものと比べると、ソフトに優しく出来ている。
一緒に、一昨年の「骨付き2年もの」が入っていた。
これは、もう、最高! 天国!! 生ハムの最高峰。
スペインの荒々しいおいしさと違って、繊細で、気品さえ感じられるものになっていた。

2008年5月16日金曜日

ホワイトアスパラ、特大特小




春から初夏にかけてはホワイトアスパラのシーズン。
新宿伊勢丹の「フランスフェア」から帰って来た家人が「こんなすごいのあった」と、巨大なホワイトアスパラを袋から出した。
これはすごい、重量級だ。
早速大きな鍋で茹で、一緒に買って来たフランス製無塩バターをたっぷり乗っけた。
このバターは「これを食べたら人生が変わる」とかいうキャッチフレーズで売っていたのを、しばらく並んで買ったそうだ。
巨大アスパラは、しゃきっと最高状態でゆで上がっている。
ナイフでスカッと切り、大口開けてパクっ。
ヨーロッパの初夏の香りが、歯の間から飛び跳ねた。
無塩バターは人生が変わるほどのものではなかった。

さらに一緒に買って来たのは、これまたかわいいホワイトアスパラ。
サラダ風にして、指でつまんで食べた。

2008年5月15日木曜日

サツマイモの丸太天ぷら


雲丹の天ぷらでびっくりしたあと、今度はサツマイモの天ぷら。
この店の今までの状況からいって、スライスしたサツマイモをただ揚げた一般的なものが出て来るとは思われない。

度肝を抜かれた!
厚さと言うか長さと言うか、4センチほどにばっさりとカットした短い丸太状になったのを、丸ごと揚げ、それを今度は繊維に並行に4つにカットしてある。
うわー!!
叫びが出ている所に「これをちょっと振りかけるとおいしいですよ」と持って来たのは、ブランデー!!
なんと大胆奇抜!
サツマイモの天ぷらにブランデーは、しっかり合っていた。

雲丹の天ぷらもサツマイモの天ぷらも、お茶の水「山の上ホテル」の天ぷらの店。

2008年5月14日水曜日

雲丹の天ぷら


これがメニューに書いてある。
いったい雲丹をどうやって天ぷらにするのか?

大葉の上に、雲丹をたっぷりと乗せて揚げてある。
一口かじったら、表面の衣がぱりっとしていて、中の雲丹は半生とろとろ状態。
雲丹の甘さが適度な加熱で上品に引き出されている。
芸術品。

2008年5月13日火曜日

野菜寿司


少し離れたカウンターに座っている三人連れの客の所に、何やら茄子の乗った寿司のようなものが出された。あれは何だ?
「野菜の寿司で、特別注文の予約です」
となると、今注文できないことになるが、一応無いのか聞いたら「二つずつなら出来るそうです」
ふたつずつ、という意味が分からなかったが、とにかくお願い。

出て来たのは、小さい茄子と、大きな空豆が二つずつ。
「味はついていますので、そのままどうぞ」
茄子は浅漬け。切れ目を数本入れ、シャリに合わせて曲がるようにしてあり、海苔で軽く巻いてある。
空豆は小さな軍艦巻きタイプ。
これはヘルシーな寿司だ。
青山に野菜寿司をいろいろ出してくれる寿司屋があると聞いたので、今度行ってみよう。

2008年5月12日月曜日

ばくらい


「ばくらい」というのは、海鞘(ホヤ)と海鼠腸(このわた)をごちゃごちゃに混ぜたもの。
このわたは、真ナマコから採った腸の塩辛。
どちらも珍味で、このわたは、おちょこに少しだけ、なめるように食べながら、辛口の日本酒等、鳥肌立つほど魅力的。
「ホヤはだめ」という人も多いが、鮮度の良い良質のホヤを食べさせると「えーーー、こんなにおいしいの?」となる。
見た目はイカの塩辛が赤々となっているように見える。
ばくらいの名前の由来はどうも「爆雷」
手榴弾に似た形のホヤから来ているようだ。
この二つが一緒になったのだから、その味は、摩訶不思議な妖味になる。
お茶の水「山の上ホテル」の天ぷらの店にある。

2008年5月8日木曜日

サンマの稚魚干し




実に手の込んだ最初の八寸の中に、煮干しのような魚が入っている。
サンマが日本海側を北に上がり始めたのが、若狭湾で一部が捕まってしまい、干物にされたのだ。
実にかわいいサンマの干物。
かじると、パリッと折れて、この小さな中に、凝縮されたおいしさが詰まっている。

春一番の鰹(かつお)のタタキは、おくどさんで炙ってあるため、軟らかく火が入り、切り身がなんと、玉虫色に光っている。

仕上げに「お焦げの所を少しだけ」
竃で炊いたお釜の底についているお焦げを、ほんの少しだけ茶碗に入れてくれた。
雅な、京都は銀閣寺前の夕食だった。

2008年5月7日水曜日

はば海苔




松江の「いと賀」で、浅い色の海苔のようなものが出て来た。
いっしょにいた地元の人が「うわーーー! なつかしい!」
これは「はば海苔」といって、多分昔は雑な海藻か海苔の様に扱われていて、だれでも普通に食べていたのかもしれない。
しかし、いつの間にか無くなり、今ではほとんど手に入らない「高級」な食材になっているのだそうだ。高級か懐かしいか稀少か、といった様なものだろう。
干物になっているので、食べるとぱりぱりと、やっぱり海苔のような音がする。
味は「素朴な海藻」で、おいしい。

大将が「今日のサバはこんなすごいの」と見せてくれたのは、まるまると太った、まるでブリのようなサバ。
刺身の醤油がここはおいしいので聞いてみたら「うちの刺身に合わせて特別に造ってもらっている」ということで、ボトルを見せてくれた。
ラベルには「いと賀 さしみ醤油」と書いてある。
なるほど、ここまでこだわっている大将なんだ。