2007年11月29日木曜日

器も秋



お椀の蓋を開けようとしたら「ちょっと待ってください」
なかひがし」では、器からご馳走。
お椀の蓋には、収穫したばかりの稲をたっぷり背負った三人の農夫が並んで、重そうに運んでいる。
最初の農夫は、大きな三日月の中に入っている。
収穫を喜ぶ農夫の姿と天が見事に描かれている。
「さあ、蓋を開けてください」
絵は、裏側に続き、米をたっぷり積み込んだ船が走っている。
大坂か江戸に運ぶのだろうか。
背後には京都の山だろうか。雁が編隊を組んで飛んでいる。
器の中は、秋のナメコ汁。

2007年11月28日水曜日

秋の盛り合わせ



米をたっぷり食べた雀、ぽこんと膨らんだ丹後の黒豆、ミニカレイなど、秋の産物が盛られた皿を食べて行くと、下には大原の柿。
小さな器には、とんぶり(箒草の実)と、下にはこれも柿とフルーツソース。
京都の秋の盛り合わせだ。

2007年11月27日火曜日

モクズガニ




モクズガニ(藻屑蟹)は、上海蟹で有名だ。
しかし上海蟹は型が小さく、食べるのが大変。
楊枝でほじくるようにして細かい所まで食べ尽くすのが礼儀だそうだが、価格も高く、それならばワタリガニの方がよっぽど食べやすいし価格も安い。
盛岡の山の方でこのモクズガニが捕れたら電話が居酒屋に来るようになっていて、それがすぐに大好物の客に転送されるシステムが出来ている所があった。
運良くこれに出会って行ったら、小型の毛ガニぐらいあるモクズガニが店に待っていた。
こんなに大きいモクズガニがあるなんて、びっくりしたー。
またある時、ラオスから直送されてきたモクズガニに出会ったこともあった。
大きなモクズガニは、濃厚なミソがたっぷり入っていて、蟹味噌の王様といった所だ。

唐津でこれにまた出会った。
山の清水を使い、店の前にたくさん半養殖されている。
小さめのこぶし大ぐらいの茹で立てがたくさん、大皿に山盛り。
殻を外したら期待通り味噌がたっぷり。
べろっとミソを舐め尽くす。
足も太く、身が詰まっている。
そして、ここの名物酒「太閤」
名に恥じず、どかっと太った徳利に堂々と入っている。
モクズガニと「太閤」、合うねー。

散々飲み食べした仕上げは「モクズガニ飯」
さらにデザートは、芸術品のように完熟し、透明になった柿。
これだけ熟すと、柿の蜜だ。
秋真っ盛り。

2007年11月26日月曜日

一ヶ月だけの山女魚の卵



11月の頃、年に一ヶ月だけ、山女魚が卵をはらんでいる時期がある。
はち切れるように丸々と太った山女魚の塩焼きが、大判の唐津焼きに、米のバクダンと一緒に出てきた。
取り皿に移し、箸で側線を切った途端、小さなピンポン玉のような卵が爆発するように飛び出してきた。
これだけの卵がよくもまあこんなに小さな魚体に入っているものだ。
味はそれ程おいしいものでは無いが、冬に向かった時期の珍味になるのだろう。
卵が無くなったあとの皮、縁側が、たくましいおいしさ。

2007年11月22日木曜日

川魚と摘草の盛り合わせ



ここの料理は、本当に川魚と摘み草だ。
飾りの野菊まで添えられている。
大きな唐津焼きの皿に盛り付けられた川魚は、鯉と山女魚。
鯉はさっぱりとした刺し身。
山女魚は内臓を取り、骨付きのまま輪切りになっている。
いくつもの大根類や野草が皿いっぱいに盛られている。
紅中大根、といっていたように記憶しているが、中の部分が紅色をした小さな大根を噛ると、野の風が凝縮されているようだ。
小さな黒っぽい辛味大根は、ぴりっと口内を引き締める。
サラダカボチャを噛ると、パリッと歯の下で割れた。
山女魚に自家製の甘塩強めの柚子胡椒をちょっと乗せて食べると、渓流のせせらぎが聞こえてくるようだ。

2007年11月21日水曜日

鰻の湯引き


「川魚・摘草料理の飴源」とある。
川の魚と野草料理。
風格ある、木でしっかりと造ってある建物。
早速この店人気ナンバーワンの「鰻の湯引き」
鰻のタタキは食べたことがあるが、湯引きは初めてだ。
天然鰻の中から選んでいるのだろう、たくさん食べたいといってもダメだそうだ。
鰻の身を皮ごとスライスを熱湯にくぐらせ、冷たい水で一気に冷やしたのを、氷の上に乗せて出て来た。
ポン酢で食べる。
言われなければ、河豚の皮付き厚切りスライスと言われても分からない。
皮はとろりこりこり。身はふんわりだ。

2007年11月13日火曜日

おりめき




米沢のいつもの「志乃」に電話したら「今日はお昼に団体でたくさん出てしまったから、加藤さんの食べるの無いよ」
そうは言っても何かあるだろうと「あるもんでいいから」と、行って見た。

最初に出て来たのは菊の花。
菜の花もそうだが、花を食べる国民はあまりないんじゃないかな?
菊はお酢を入れて煮るとしゃっきりするのだそうだ。
志乃の女将は「そんなの常識」だというが、最近の人はそんなこと知らないだろう。

次に出てきたのは「さっき、夕方採ってきた茸」
見たことあるようでないような形をしている茸だ、何だろう。
これは「おりめき」というのだそうだ。
「雑茸だね」
というのだが、食べたらなめらかで、ナメコの大きなもののようだ。
牛肉の脂肪とさっぱりした葱がこの茸によくあう。

そしたら今度は本当のナメコの、巨大なのが出て来た。
大きなナメコはやっぱり最高だ。
この後米沢和牛と地元の元気キャベツで焼き肉。
仕上げは「焼きおにぎり」とさっきの「おりめき」
何も無い、って言っても、素晴らしいのがたくさんあるじゃないか。

2007年11月8日木曜日

バフンウニの握り



バフンは馬糞、食品の名前としてはふさわしくないが、形が似ているからこう呼ばれるようだ。
もうひとつの一般的なウニは「紫ウニ」で、バフンウニより価格は安い。
バフンウニにも、大きいのから小さいのまで色々ある。
大きなバフンウニ1切れを乗せた握り寿司が今日の仕上げだった。
このウニは、いと賀の大将が漁師に頼んだもの。
大将は、鬼エビ、アワビなど、直接料理に頼んでいるものが色々ある。
こんな大きなウニだけ採ってもらうのかと思ったらそうではなく、注文した量のウニを採り、それを無選別でゲタ(ウニを入れる木の箱)に乗せてくる。
その中から、大木なのを選んで、握りにしてくれたのだ。
元のゲタを見たら、大きいのが少しだけ、あとは中小のが乗っている。
こういう無選別は料理屋向けにしか売れないだろうな。
仲買いやましてや小売店向けでは、大きさと色が揃っているのを要求されるから。
しかし、資源、もったいなさ、コストといった点から、無選別はいい。
量販店向けの野菜なんか、工業製品みたいなことを要求されている。
葱は長さ30センチで先っぽが3つに分かれているとか、キュウリの長さと太さはどうかとか、またそれを消費者が欲しているようだし、物流やパッケージにぴったりあった大きさでないとうまくいかないという理由もあるようだし。
でも、おいしいの、無選別で、安く無駄無くの方がいいな。

ホクホクのウニ握り。

2007年11月7日水曜日

超厚切り松茸土瓶蒸し



今年は松茸が高く、例年の1.5倍だという。
中国産を売らないので、それも拍車をかけた。
キロ2万円。
しかし高いからといって、料理屋ではいつものお得意さんに高くは売れない。
こういう時、常連客には余禄。
鱧と松茸の土瓶蒸し。
スープをちゅるりと。
蓋を開けたら松茸の香りが立ち上る。
松茸を箸でつまんだら、スライスではなく、豪華ぶつ切り。
二口に分けて、松茸もぐもぐ。
鱧は表面を炙って風味を更に出している。
ああ、秋だなー。

2007年11月5日月曜日

「じょか」秘密版


焼酎を水で割り、土瓶に入れて、そのまま直火にかける。
焼き酒の焼酎版だ。
松江の「いと賀」で寒くなるといつもこれだ。
今秋最初の「じょか」
いつもは「佐藤」の芋焼酎を使うのだが「何かある?」と聞いたら、
「では、秘密の焼酎を」

持ち出してきたら、コルクの筒。
「切りますよ」と、蓋をひねって、封印を切った。
360mlの瓶。
アルコール度38%の原酒で、芋と米麹を使っている。
毎年この店に6本だけ。
メーカー名もブランド名も秘密。
度数が高いので「水3,焼酎2が良い」という大将の提案。

直火にかけられ、熱くされた「じょか」
飲まなければよかった。
上には上があるものだ。
こんな豪勢なの知ってしまったのでは、これからの人生、どうするんだ。

大事に飲んでいるつもりが、すぐに無くなった。
仕方ない、いつも飲んでるのにグレードダウン。
いつものじょか、素敵なのに、秘密の焼酎のあとは、やっぱり。
いやいや、ぜいたく言ってはいけません。

あと5本あるな

2007年11月2日金曜日

香茸


刺し身盛り合わせの後ろに隠れるようにあった黒い茸(きのこ)。
何だか分からないまま、醤油で煮込んで黒くなった茸かなと思って食べたら、なかなかおいしい。
これは何かと大将に聞いたら、
「こうだけです」
香茸。
香りの茸だ。
「これです」と元体を持ってきたら、真っ黒。
この状態で生えている。
奥出雲の産物のようだ。
最近、売り場デザインでも商品でもパッケージでも、黒い色が流行っているけど、これなんかも面白そうだな。

2007年11月1日木曜日

サンマの中華風唐揚げ




名古屋でいつも行く「カンメイホウ
今日のお薦めは、牡蠣の唐揚げ、サンマの唐揚げ。
この店だと、普通と違う、感動ものの料理で出て来るので、いつもワクワク。
牡蠣は唐揚げというよりもフリッタ。
ぷっくらと膨らんだ状態で揚っている。
シャッキッとした野菜達と一緒に、あんかけ状。
牡蠣に噛み付くと、中味が弾けた。

サンマの唐揚げ、なんて、昔の学生定食屋のメニューじゃないかと思う所だ。
見た目もその通り。
食べたらびっくり仰天。
このサンマの唐揚げは、トウガラシの風味と野菜の鮮度に包まれて、ホクホク。
頭まで噛った。

あと色々、ワイン白赤各一本、足りずに紹興酒常温でグラス1杯。
仕上げはいつものように野菜そば半分。これで腹落ち着くんだよねー。