2008年7月31日木曜日

雨の葬列


雨の中、函館から津軽海峡を左に見ながら南下。
岩部岳の所だけ海沿いの道がないので山を抜け、昨日通った青函トンネルの出口の手前から再び海沿いの道。
左に何も無い海を見ながら、のんびり時計回りに北へ走って行く。
寂しい海に、雨がしとしと降り続いている。
風はないので、海はそれほど荒れていない。
逃亡者か流浪者の気分。

小さなトンネルを抜けたとたん、霧雨の中、山側の歩道に10名ほどの人の列。
今まで人を見なかったのに、いきなり出て来たこの列は何だろう?
真ん中あたりにリヤカーが引かれ、その上の中央に長細い箱がひとつだけ乗せられている。
ジンッと、鳥肌が立った。
これは、葬列だ。

反対側の海側を、白いライトバンが、葬列の歩みにあわせてのろのろと、疲れたように沿い走っている。付き添いの様だ。
私はスピードを落とし、ゆっくりと追い越した。
葬列は、だれも傘をささず、うつむいて、リヤカーの前後を引きずるように歩いている。
全員着古した普段着。

葬列の先端は、80歳ぐらいのおじいさん。
上半身を前に倒し、しかし顔はまっすぐ前に向け、呆然と口を空け、歯は食いしばっていない。
漁師なのだろうか、赤銅色に焼けた顔、腕。
頬が光っている。雨で光っているのか、涙で光っているのか……
棺は、おじいさんの家族なのか、友人なのか……
おじいさんに先導された葬列は、黙々と進む。
おじいさんがかっと見つめる先は、雨に煙る誰もいない道と海があるだけ。その先は霧雨で見えない。
悲しいが、素朴な、太古からの儀式……
どこまでこの葬列はいくのだろうか……

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