2008年10月30日木曜日

幻魚





突き出しに朱色のキノコが出て来た。
とろりとぬめりがあり、大型のナメコをシャキシャキにしたような、ちいさいけど気品ある味。
これは、山形あたりでは「いくじ」といい、野生のキノコで、高級品、あまり食べられない貴重品。地方によっては「網茸あみだけ」「落葉らくよう」とも呼ぶそうだ。

「今日はゲンゲが手に入りましたので、鍋です」
鍋が運ばれてきたが、元はいったいどうなっているのかと聞こうとしたら、さすが大将言われる前に持ってきた。
皿に乗せられて来たゲンゲは、白身の優しい顔をした魚だが、魚体の周りにまるでシェルターのように透明のゼラチンのようなもので包まれている。
後で調べてみたら、深海魚で、皮はやっぱりゼラチン質、幻魚(げんげ)とも書くようだ。
このゼラチン膜があるので、三枚おろしなんて出来ない、そこで輪切りで鍋に入っている。
ゼラチン質を落とさないように箸でそっと持ち上げて口に入れたら、とろりと、ぷよぷよが入ってきた後、中身は貴人のような白身。
皆でひと一切れずつ食べた後、とたんにあと何切れあるか、鍋に目が走った。
ここでも大将先を見ていた「大丈夫、お一人4切れずつあります」

0 件のコメント: