2009年3月10日火曜日

0903ウイーンー8:「エウゲニ・オネーギン」絶賛とブーイング





3月7日、オペラ座で小澤征爾さん指揮の「エウゲニ・オネーギン」
特に今回は初演。映画なら封切りだ。
映画だと予告編があるが、オペラでは事前の情報は何も無く、どのような演出か楽しみで、批評家も初演には顔を出し、翌朝の新聞にコメントを出す。絶賛されたり酷評だったり、演ずる方は人生をかけた試験みたいなところがある。
満席の中、小澤さんがいつものようにちょこちょこと登場。
指揮台に楽譜無く暗譜で、これもいつものように指揮棒無し。

小澤大ファンの私としては、この初演の人気がどうなるのか、学芸会の主役に自分の子供が選ばれたのを見に行く気分。
実際、以前、小澤さんはブーイングを受けたことがあり、どうなるか。

演奏が始まり、すぐに幕が開いたら、近代的演出だ。
これはいったいどういうことなんだ?
エウゲニ・オネーギンは1820年代のロシアが舞台で、舞踏会も出て来る、それなのに、モノトーンのシンプルな舞台にジャケットでいきなり踊りまくりだしたのは、どうしたこと?
それもバク転あり、宙返りあり、倒立歩き、まるで体操部の集団練習だ。
新しく編集した「源氏物語」を開けたらローマ字で書いてあった、なんてところか。
演奏も覇気がないようだ。
金管楽器がプワーンとずれたように聞こえた。

このままいったら駄目だよ!

15分ほどで1幕目の第1景が終わり、幕がいったん下がった。短時間の背景替え。
何となく戸惑い気味の拍手。
聴衆全体が小声でガヤガヤ。
そう、誰もこの演出に戸惑っているのだ。

すぐに始まった第2景をハラハラしながら聞いていたが、演技も、演奏も、次第に乗ってきたようだ。
このオペラは3幕からなるが、今回の演出では1,2幕の6景ほどを110分ぶっ通し。
その間に、演奏、舞台、どんどん盛り上がり、2幕目最終の決闘シーンが終わったら最高潮、大拍手。
これならよさそうかな?
しかしあの近代的な衣装と舞台はどうなんだ?

休憩時間、オペラ座の休憩室は着飾った紳士淑女がワインを飲み、ガヤガヤの喧噪がわーんとこだまする。
休憩中、ウイーンの皆さんは満足した様子。

3幕が始まる。
小澤さんが入ってきたとたん「ブラーボ」の声があちこちからかかった。
ブラーボは全曲終わったときにかかるもので、途中でかかるのに出会ったことない。
よかったー。

3幕目は出演者絶好調、聴衆も時間を忘れてエウゲニ・オネーギンの世界に入っていた。
緞帳が下り、小澤さんが最後の音を出し終わったとたん、観衆は飛び上がった!
爆発炸裂する拍手は、この巨大な石造りの建物をもふるわせる。
ああよかった!

カーテンコールが始まった。
大聴衆の感動はさらに膨らんできた。
小澤さんが舞台のカーテンコールに登場すると、拍手最高潮。
間違いなく大成功だ!

カーテンコールの中、4人の人間が飛び出してきた。
そのとたん、ブーイングが始まった。
隣に座っているウイーンの人らしきおじさんも大声でぶーぶーやっている。
出て来た4人は、舞台衣装デザインスタッフだ。
これに皆文句を言っているのだ。
そうだよなー、帝政ロシア時代の豪華な衣装と舞台装置を見れると楽しみにしていたのに、あれじゃーなー。
しかし、こっちの人ははっきりしているなー!
出演演奏すべて大絶賛、衣装と舞台にブーイング。

大絶賛とブーイングが一緒になったオペラ、面白かったー!
ブーイングまで楽しんだな。
ウイーンの新聞、明日はどうなるかな?
(写真は開演中ではありません)

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