2009年7月10日金曜日

金平糖から生命の起源


京料理で、デザートのあとに金平糖が出て来た。
古風古式に作ったものだ。
いびつだが、俺こそ本物だと、胸を張って、これも古風な小皿の上に乗っている。

金平糖の作り方は、砂糖に少しの水を加えて鍋で溶かし(蜜)、芯となる芥子粒をしゃもじに入れて撹拌し、何回もすくい上げていくと、自然に出来上がるのだそうだ。
どうして丸くならないで、角がいくつも出て来るのか、分からない。
角の数は、24〜36だが、メーカーの「エビス堂」で数えたら、ここのはどういうわけか17が多かったそうだ。
どうしてこの数になるのかも分からない。

百年前、物理学者と文学者を一緒にやっていた寺田寅彦。
関東大震災を予告していた。
俳句と文学は夏目漱石に師事した、というよりも、転がり込んでずっと居ついた、のようだ。
その寺田寅彦が、金平糖について書いたエッセイがある。
科学と科学者のはなし—寺田寅彦エッセイ集 」の一節

金平糖は、芯から作っていくと、なぜ角が出て来て、その角の数も大体同じなのか?
寅彦は「フラクチュエーション:統計的異動:平均からの離反」(一言で言えば「揺らぎ」かな?)からそうなるのだろう、を、物理学的考察した。
わずかな揺らぎがあり、揺らぎから平均に砂糖水が均一に着かないで偏り、角が出来てくる。
揺らぎは金平糖の生成から見ても、世の中たくさんあるんじゃないか?
不可思議の大元である生命も、揺らぎから生まれたんじゃないか?
フラクチュエーションは、物質から生命が生まれた原因なんじゃないか?
と、寅彦は思考を巡らしていく。

すごいね、金平糖から生命と物質の境目まで考えちゃうんだから。
金平糖をかじりながらこの話を同行者にしていた。
金平糖から、宇宙規模まで、たった数分で行き来できる。
コスト無し。
人はなぜ思考できるようになったのか?
フラクチュエーションかな?

店を出たら、生命の中の京都は、さわやかなフラクチュエーション。

追記:この2週間ほど後に羽田空港に行ったら、同じ現象の菓子があった。
ロール状に回転させながら具を絡ませて大きく太くしていく菓子がディスプレイされていて、これが、最初は丸太状だが、大きく太くなるにつれて、小さな角が出来ていくのだ。

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