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「
都わすれ」は、ここの女将で社長(佐藤京子さん)が経営する3つの温泉旅館の一つ。
佐藤さんは子供のころアトピーで、治すのにこの夏瀬温泉に通ったことがあったが、数十年後、どうなっているかといったところ、さびれはててつぶれた湯治場の廃虚になっていたのを発見したという。
しかし自然の恵みの温泉はこんこんと湧き出ていた。
そこで、高級温泉旅館として再建したものだということだ。
佐藤京子さんは胃ガンも克服しているたくましい方。
到着時のウエルカムドリンクに昆布茶を頼んだら、実に美味しい。
部屋に入ったら、落ち着いた和室で、窓の外は夕暮れ間近のブルーの世界。
夏瀬ダムで出来た湖をはるか下に見下ろす部屋付露天風呂が「さあどうぞ」と誘っている。
シャワーを浴びて外に出たらちょっとした吹雪。
5センチほど積もった雪を数歩歩いて露天風呂に飛び込む。
雄大な景色の中、身体温かく、首から上は冷たい。
中世フランス料理のレシピに「鳥の活き造り」というのがある。
生きた鳥の羽根をの首から下を剥ぎ、首だけ出せる穴を空けた箱に入れ、下からローストする。
身体はロースト調理されるが、首から上は冷たいので無事なまま。
体が焼き上がったら皿の上に丸ごと乗せ、切り分けると鳥の頭だけがギャーギャー騒ぐ。
その叫び声を聞きながら食べるところがこの料理の魅力。
という残酷料理だが、この吹雪の中の露天風呂はそんな気持ち。
身体ぽかぽかで、顔冷たく、頭の上は雪がどんどん積もる。
幾ら浸かっていてものぼせない。
冷たくなった顔を温めるのに、頭から湯を被ると、積もった雪が落ちる。